【#店舗オーナー】カフェと暮らしの雑貨店fumi(前編)諏訪で人が集まれる場所を作る
長野県諏訪市「上諏訪駅」から歩いてすぐの場所に2019年オープンした『カフェと暮らしの雑貨店fumi』。入り口を入ってすぐは雑貨が並ぶスペースで、その奥にはカフェスペースもある。オーナー夫婦の緩やかな雰囲気と、芯がしっかり通ったfumiにしかない世界観をたっぷり味わえます。
そんなfumiの村上 信之さん(通称:のぶ)・智美さん(りっきー)ご夫婦にインタビューさせていただきました。fumiをオープンする前の職業から、fumiをオープンした経緯まで。そして後編にはヤマとカワ珈琲店との出会いの話を聞いてきました。日常の営業の中ではなかなか聞けない深くて濃い話ができましたよ。
カフェと暮らしの雑貨店fumi
住所:長野県諏訪市末広5−7
Instagram コチラ
『人が集まって、何かが生れる場所』
川下:今日はよろしくお願いします!
のぶ・りっきー:お願いしまーす!
川下:2人揃ってインタビューってあまり経験してない?
のぶ:取材はいつもだいたい1人で受けることが多いですね
川下:あ、そうなんや
のぶ:聞かれる内容も、どうして諏訪に来たんですか?とか、お店を始めるきっかけは?とかが多いので
川下:そっかそっか。ちょっとその辺から話を聞きたいのでー。えっとね…。一応このインタビューのテーマが、ネット調べればわかる営業時間のことだったりとか、そういうのじゃなくてもうちょっと、心の奥と言うか。その内面の部分を聞きたいなと思ってて。なんで諏訪に?とかっていうのも、多分すごい聞かれてるとは思うんやけど、あらためてなんで諏訪に来たの?のぶくんの出身は?
のぶ:自分は千葉県の船橋市です
川下:そうやよね。千葉やよね。学生の間もずっと千葉にいたの?
のぶ:高校までは千葉県で、高校卒業して、大学のタイミングで横浜に出ました
川下:うんうん、大学で横浜か。てことは、横浜で就職したの?
のぶ:キャンパスが途中で変わったので、大学3年のタイミングで東京に移動して、そのまま東京で就職しましたね
川下:それはどんな仕事やったの?
のぶ:それは、なんだろうな…。メイン事業は飲食業だったんですけど、空間デザインみたいなのを会社全体のテーマにしていて、その中の一つのコンテンツで飲食事業があって
川下:へえー。じゃあ店舗の空間を作る会社ってことか
のぶ:そうですね、それをメインに。そういうお店づくり、空間づくりにすごく興味があって。会社の中でけっこう色々なことさせてもらって。カフェとか、健康食みたいな店とか、イタリアンとか、けっこう色々回って。で、その中でも渋谷の路面店だったりとか、池袋のパルコの中のお店とかっていう、色んなニーズのところを経験させてもらって
川下:うんうん
のぶ:福岡にも出張させてもらう機会もあって、福岡の系列店で働いてみたり、カフェの視察や地域性などを勉強したり。けっこう当時ガツガツしていたので、なんだろう、上の会議とかいろんな事業にも関わっていて、音楽イベントの運営やフードブースに毎年参加させてもらったりとか、フットサルの大会を立ち上げたりとか、キッチンカーを企画したりとか。上長や社長にも可愛がってもらっていました
川下:へえー
のぶ:ただ、なんだろうな。2年たった時くらいかな。会社の方針も、徐々にやっぱり変わっていっちゃって。ベンチャーだったんですけど、どうしても会社が大きくなっていくにつれて、上からの指示の方が増えてきちゃって。商品開発とかも、すべて店舗から独自でやれていたのが会社からの落とし込みになったりとか
川下:なるほどねぇ
のぶ:全国共通メニューや季節のメニューの考案など、やりがいは大きい所もあったんですけどね。だんだん品質の安定化とか、そういうのになってきて、徐々にやりたい規模感と違ってきたかなっていう感じで、それで辞めました
川下:へえー。でもそもそも、個人店に興味を持つとか、カフェとかの運営に興味を持つっていうのは何かきっかけはあったの?
のぶ:昔、おじいちゃんがお寿司屋さんを経営していて、ずっとそこの二階に住んでたんですよ。で、おばあちゃんは旅館の女将さんだった。なので根っからのそういう接客系、サービス業で。まあ父親側は製造業だったんですけど、自営でやっていて。なのでそういう、お金の動きが小さいころからすごい好きで。小学校の頃とかチラシとか見て、値段安いところを探したりとか、お小遣いをどう使うかとか、そういうお金周りのことがすごい好きで
川下:へえー!商売人と言うか、そういう血筋なんやね
のぶ:そうだと思います。お金をいただいて、サービスを提供してっていう分かりやすいお金の動きが好きで。でも企業間同士のお金のやり取りにはそこまで興味はなくて、消費者とサービス提供者のBtoCの仕事、俗に言うサービス業に興味があって。その中でもカフェはけっこう幅広いなあって
川下:確かにね、幅広いから可能性は色々あるもんね
のぶ:そう。なんでもいいって思ったときに、人が集まって、そこで何かができればいいなって思っってたんで、カフェをやりたいっていうよりは、場所を作りたい
川下:なるほどなぁ。。…やっぱそうなんやな。カフェをちゃんとやりたい人は『場所作り』を大事にしてるんやなあ。前回インタビューしたソノマノさんも本当にそんな感じ…鬼無里っていうまぁまぁ田舎なんやけど、人が来るか来ないか分からんけど、やっぱり地元の人に求められてるっていうのもあって、みんなが集まれる『場所』を、ってことでカフェを運営してる。パンを焼きながらカフェも営業するというスタイルは、すごいなあって
【#卸店オーナー】パン屋ソノマノ(前編)
『好きなことを、好きな場所で』
川下:その仕事を辞めた時は東京に住んでたわけでしょ?そこから東京で店を開くんじゃなくて、諏訪を選んだのはなんでなの?
のぶ:都会の働き方がちょっと違うのかな、とか。どうしてもお客様との距離が希薄だったりとか
川下:まあ、人が多いし、家賃も高いからね。回転させなあかんしねえ
のぶ:そうなんですよね。もう少しお客様にゆっくりしてもらいたいってなったときに、昔から鎌倉が好きだったりで色々考えたんですけど、鎌倉も家賃が高いなーとか、ひとつのお店の存在価値とか影響とか、色んなことを考えて
川下:うんうん
のぶ:東京で働いていた時の同僚にマスヤ※のオーナーと友達って人がいて、マスヤの話もその頃よく聞いてたんですよね
※マスヤゲストハウスの略。長野県下諏訪町にあるゲストハウス
川下:あ、そこで繋がるんだ
のぶ:で、その同僚が、リビセン※の方とも仲良かったりとかで、けっこう誘ってくれてたんですよ。今度長野に行くよ~とか
※リビルディングセンタージャパンの略。長野県諏訪市にある古材と古道具のお店
川下:うんうん
のぶ:ちょうど今後の暮らしや働き方を考えていた時期だったので、色んなところに行ってみよう、ってことで、長野に季節ごとくらいに来て
川下:なるほどねえ。じゃあ季節ごとに来ている間に、諏訪いいなあって思って、こっちに来たってことか
のぶ:はい。仕事のきりのよいところで退職して、すぐに行動した感じですね
店内雑貨の様子
写真提供:fumi
川下:雑貨はりっきーが担当してるんだよね?りっきーはさあ、これまでどういう歩みできたの?
りっきー:高校時代にマクドナルドでアルバイトしてたんですけど、それがすごく楽しくて。高校を卒業して…普通にフリーターしてて。で、やりたいことって考えた時にまず映画館で働き始めて。映画が好きだから、映画館で
川下:へえー!
りっきー:その次が、手紙が好きだから郵便局。とか。そういう感じでやりたいところで働いてて。それでamijok※で働ける機会をもらって
※amijok 長野県松本市にあるカフェ
のぶ:それもカフェが好きだからだよね。カフェ巡りがちょうどすごく好きなときで
りっきー:そう
のぶ:本当に好きなところでね。好きなことを、好きなところで
川下:へえー!めっちゃいいじゃん
りっきー:普通に常連でよく行ってて、それである日「働かない?」って言ってもらって。それで週末だけamijokで働かせてもらって。その当時はカフェとか雑貨屋さんを将来やりたいなって思ってたんですけど
川下:あ、もうその時に思ってたんや
りっきー:そう、思ってて。小さいころから、まあ食べるものも好きだし、雑貨も好きだし。でもいざ、amijokで働いてみると、自分でやるのは大変なことなんだなぁって。マックだったり大きい企業とかでは分からなかったんですけど。で、カフェはお客さんでいいなって
のぶ:お店をやる側になりたい人もいれば、色んなカフェを巡る方が楽しいんだっていう人もいるもんね
川下:そうやね、そうやね
りっきー:そう、それで私ひとりじゃカフェはできないなと思って、雑貨屋さんも多分できないなって思って。で、またプラプラやってたんですけど、そのときに、のぶに出会って
川下:えー!すごいねえ、それ。やりたかったわけじゃん、お店を自分で。でもできないかもーってなってたタイミングで、店やりたいって言う男性と巡り会えたわけじゃん
りっきー:そう。…で、のぶが一緒にやりたいって言ってくれたので。良い意味で、こう、巻き込んでもらえたなと思っていますね
『元薬屋をリノベーション』
川下:ここの建物に出会ったのはどういう経緯だったの?
のぶ:空き家開発とかリノベーションとかにすごく興味があったので、良い建物ないかなぁとか、諏訪でお店をやるならどの辺がいいかなぁとかって探していたら、ここを見つけて
空き家だった当時の写真
写真提供:fumi
川下:うんうん
のぶ:ただやっぱり不動産情報にも出てないような建物だったので、地域のおじちゃんおばちゃんの会合みたいなのに参加して
川下:へえー!情報をゲットするために?
のぶ:そうですね
川下:やるねえ!すごいね
のぶ:そこには、なんとかして商店街を盛り返したいみたいな人たちが集まってて。地域のお菓子屋さんの店主だったり、学校の先生だったりとか
川下:うんうん
のぶ:それで地域で頑張ってくれる子たちが欲しいんだよね、って。ちょうど求めてたんだ!っていう感じになって、空き家の情報をそこで聞いて
川下:へえー!やっぱりそういう人らが握ってんねや
のぶ:握ってますね
川下:すごいねえ。じゃあそういうところに行く価値はすごくあるんだね
のぶ:そうですね。地域の人柄とか、ここはこういう繋がりがあるよ、とか。いろいろ教えてもらったり。そしたら、ここの大家さんを紹介してくれて
川下:うんうん
のぶ:こういうことをしたいと思っているけど借りられますか?みたいな感じで話して。ただやっぱり、なかなか貸してはもらえなくて
川下:ふーん。ここは大家さんのご自宅やったの?
のぶ:大家さんの、お父さんが営んでいた薬屋さんだったんです。で、大家さん自身も幼少時代を過ごしていたっていう
川下:あー、今は別のところに家があるから空き家になってるっていうパターンか
のぶ:そうなんです。ここはもう薬屋さんのまま、住居のままで。残置物で溢れ返っているような状態でした。ただ、やっぱり思い入れのある家だったので、貸してもらえるまで想像以上に時間がかかって
川下:そうやよね。思い入れあるもんね。それに、大家さん側の立場で考えると、まぁ若い子に協力したいっていう思いもありつつ、でも面倒くせえなっていうのもあるやろうしねえ
のぶ:ただ、いずれはここどうするんだろうなって感じだったときに、解体費用が仮にこれくらい掛かるとして、家賃をこれくらいに設定すると、4~5年貸すと解体費は賄えますよ、固定資産税もそこから払えばいいんじゃないですか、みたいな感じの説得で、前向きになってくださって
川下:うんうん
のぶ:地域の方々や行政も応援してくれて、新聞とかでも取り上げてもらったりとかしたんで
改装中の様子
写真提供:fumi
川下:そういうのデカそうだよね。そういう年代の方って新聞とか読むもんね
のぶ:そうですね。なのでそういうので信頼をしてもらって、借りられることが決まって。
後編はこちら↓
【#卸店オーナー】カフェと暮らしの雑貨店fumi(後編)
photo:古厩 志帆