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Interview10
【#スタッフ】店主・川下康太

【#スタッフ】店主・川下康太

これまでのインタビューシリーズでは、スタッフやお客様のコーヒーとの向き合い方をお届けしてきましたが、今回はなんと!オーナーである私自身が登場します。お客様から『オーナーもどんな風にコーヒーを楽しんでいるんですか?』と聞かれることが多いんです。

でも自分で自分のことを書くのは照れくさいこともあって、ライターさんにお願いしてインタビューしてもらいました。
日常の中で私がどんな風にコーヒータイムを楽しんでいるのか、何を大切にしているのかを話しています。
コーヒーを片手に、ぜひご一緒にお楽しみください!(聞き手:ライター 石井妙子)

コーヒーは仕事を始めるスイッチ

ー今日はよろしくお願いします。最初に聞いてみたいのが、コーヒーの仕事をしている川下さんが、毎日どんなタイミングでコーヒーを飲んでいるのかなということ。1日の流れはどんな感じですか?

川下:わりと早起きで、起きるのは5時半かな。顔を洗ってそのままベランダへ行って、太陽を見ながら乾布摩擦とストレッチをします。

ー乾布摩擦ですか!

川下:うん。自律神経を整えるには、肌に刺激を与えるのがいいんですよ。もともと体に不調があったとかじゃないんですけど、やってみると気持ちいいし気持ちが整うから続けています。朝外に出て空気を吸うと、体の中身が新しく入れ替わる感じがしますね。それから6時ごろに焙煎所へ出勤します。

ー朝はコーヒーを飲みますか?

川下:焙煎所に着いたらまずお湯を沸かして、コーヒーを1杯だけ淹れます。「仕事するぞ」ってモードに変わるには絶対に必要ですね。コーヒーって、切り替えスイッチの要素がめっちゃ大きいと思うんですよ。子供が保育園に行っていた時は、朝送って行った家族モードから仕事モードに変えるために、コーヒーの時間を挟むことを大事にしていました。

ー朝はどんな味のコーヒーを飲むんですか?

川下:こだわりはね、特にないっすね。昨日の焙煎の残りを使ったりとか。朝は300ccぐらい淹れるかな。マグカップ1杯。それをちびちび飲みながらパソコン開いてメールを返したり、その日に発信するSNSの内容を考えたり。朝ご飯は食べないです。出勤してから9時ぐらいまでが集中できる時間帯だから、あんまりお腹に入れない方がパパパパッと進む気がして。

ー分かります。私も朝一の仕事は、コーヒーだけの方がはかどる気がします。

川下:うんうん。やっぱり消化にパワーを使われちゃうから。

ーそれにしても、朝早くから活動しているんですね。

川下:朝の時間は、わりと大事にしているかもしれない。ここで集中して仕事ができたら、その日は余裕ができるんですよ。朝は、僕にとって一番大事な仕事をします。インスタの発信だとかメールを返すだとか、お客さんとコミュニケーションを取ること。うちのお店はLINEやインスタのDMで質問しやすいようにしているので、お客さんからたくさん質問がくるんですよ。それに一つずつ返事をするのも、めっちゃ大事にしています。

ー朝いちの仕事がはかどる感覚、分かります。焙煎はその後に始めるんですか?

川下:この春から、焙煎は専門のスタッフに任せています。7時半にスタッフが出勤してくるから、その日の焙煎の相談をします。焙煎が始まったら、焼けた豆を毎回ドリップして僕とスタッフで試飲します。だから、毎日たくさん飲んでると言えば飲んでるかな。

ー確かに、1日に10種類の豆を焼くなら試飲も10回ですよね。すごい!

川下:と言っても、試飲は味のチェックのために飲むから一口だけなんですよ。一回につき30ccぐらいかなあ。テイスティングみたいな感じです。1日の中で、そこだけは真剣にコーヒーを味わってますね。

コーヒーの味にはこだわらない

ーすると、普段のコーヒーは真剣じゃない……?

川下:普段は、さっき言ったみたいにその日余ってる豆でいいってぐらいなんで笑 コーヒーを飲むという行為を大事にしているから、豆や味にこだわりはないんです。焙煎が終わった後は、試飲で残ったコーヒーを混ぜて飲んでますね。「適当ブレンド」笑

ーそういえば前に川下さんに「コーヒー豆が中途半端に残ったら、他の豆と混ぜちゃっていいですよ」と言われたのをよく覚えています。コーヒー屋さんが、そんなことを言うのかとびっくりして。

川下:自分でブレンドして全然いいですよ。たとえば料理だって、本には「材料は何グラム」って書いてるけど、自分で適当にアレンジするじゃないですか。コーヒーもそんな感覚で楽しんでもらうのがいい。「淹れ方はこう書いてあるけど、自分の好みはこうやな」とか。料理はみんなアレンジに慣れているのに、コーヒーはなぜか「書いてある通りにやらなきゃ」って思ってしまう人が多いんですよね。

ー確かに。ハンドドリップは特に、ちゃんと淹れなくちゃと思います。

川下:「いつもちゃんと淹れなきゃ」って思っている人が多い気がするんです。時間に余裕がある時や「今日は丁寧に淹れるぞ」という気分の時はもちろんそうすればいいけれど、朝とか忙しい時は適当な淹れ方でいい。コーヒーを飲んで今日も頑張ろうって思えることが大切だと思います。電動コーヒーメーカーで作るのも手軽でいいですよね。

ーそう言われると安心します笑

川下:遠出した先で地元のコーヒー屋さんを探して行くこともよくあるんですけど、さっき話したように試飲以外はそこまで真剣に飲まないので、どこへ行っても全部おいしいんですよ。コーヒーを飲む時間を過ごすってことを意識していて、なんだろう、「味の細部までチェックしてやろう!」と思って飲んだりしないから、おいしいっていう印象しか残らない。コーヒーはそういう楽しみ方をするものだと思っているからかな。

ーお店の雰囲気だとか、働いている人の印象とトータルで残りますよね。

川下:いい時間を過ごせたっていう感覚は味わいます。いい店だったな、楽しかったなっていうのは記憶に残りますね。どんなシチュエーションで飲むかって、めっちゃ大事ですもんね。僕、山登りするんですけど、山で飲んだりキャンプの朝飲んだりするコーヒーって、適当に淹れても絶対おいしいじゃないですか。あんまり難しく考えず、気楽に淹れてその時間を楽しむ、それがおいしいんだよって伝えたいですね。

食後のコーヒー、おやつのコーヒー

ー1日の過ごし方に戻って、午後はどんな感じで過ごしますか?

川下:午後は、あまり頭を使わなくてもできる作業を交互に回しています。仕事が終わる時間はバラバラですけど、最近は5時半ぐらいには終わらせて帰ります。ちょうど子どもたちが帰ってくるから一緒に夜ご飯を食べて遊んで、10時ぐらいには寝ますね。健康でしょ。やっぱり朝早く太陽を浴びると、夜ちゃんと眠くなるんですよね。

ー夜、食後のコーヒーは飲みますか?

川下:夜は飲まないですね。お客さんと話していても、夜は眠れなくなるからコーヒーは飲まないって方が多いです。朝食もパンだったらコーヒーを飲むけど、それ以外のメニューだったら一緒に飲む機会はそんなにないっすね。

ー「ヤマとカワ」オープン当初は店内に喫茶スペースがあって、カレーを提供していましたよね。やっぱりカレーとコーヒーは合う?

川下:ああ、カレーを食べたら確かにコーヒーは飲みたくなりますよね。スパイシーな口の中を中和させたいのかな。

ー(カメラマンさんが質問)ナポリタンは?

川下:ナポリタンでコーヒーは飲まないな!笑 けど、ラーメン屋さんで食べたらもう絶対コーヒーを飲みたくなる。僕、出かける時はだいたいタンブラーにコーヒーを入れて持って行くんですけど、外でご飯を食べた後に車に戻ったら、必ずコーヒーを飲みます。持っていなかったらコンビニのコーヒーを買いに行くかも。最後に口の中をコーヒーの味にしたいのかなあ。特に油っぽい料理の後は。てことは、ナポリタンの後もコーヒーいけるかな笑

ーちなみにお酒の後は、コーヒーを飲んだりしますか?

川下:サラリーマンの時は、飲み会の後に「このまま家に帰るのもなあ」って喫茶店に寄って、コーヒーを飲んで帰ってました。そこで一旦モヤモヤをリセットするというか。

ー飲み会の後で喫茶店?

川下:大阪とか名古屋には、夜中まで開けてるコーヒー屋さんがあったんですよ。今もあるのかな。ちゃんとネルドリップのコーヒーを出してくれるお店があって。でも自分で店を始めてみて思ったのは、夜の喫茶店なんて絶対大変やろうなと。お酒の後にコーヒー飲むお客さんなんて少ないし、お酒を出した方が絶対利益が出るのに。だからもう、神のような店でした。

ー同業者になったからこそ分かるんですね。おやつの時はどうですか? コーヒーに合うベストなお菓子は?

川下:うーん、クッキーが好きかも。パンも好き。パンはおやつではないな笑 ドーナツとコーヒーはもう、おいしいよね。これは長野店の近くのLAGOM(ラーゴム)さんのドーナツなんですけど、うちのコーヒーを使ってくれているからよく買いに行きます。ドーナツ屋さんが近くにあるってめっちゃいいもんね。

ー私、高校生の時はミスド(ミスタードーナツ)でよくコーヒーを飲みました。

川下:僕も高校生の時にミスドの「氷コーヒー」が好きだった! それに、ミスドってコーヒーのおかわり自由ですよね。放課後、友達としゃべりながらずっとコーヒー飲んでたな。

「コーヒーはおいしい」と気づいた瞬間

ー川下さんは、子どもの時からコーヒーを飲んでいたんですか?

川下:小さい頃はコーヒーは牛乳を入れて飲むもの、ていう感覚があって。ほとんど牛乳みたいなコーヒーをたまに飲んでました。その感覚で大きくなったから「ブラックコーヒーを飲む人なんているわけない」ぐらいの感覚だったんですよ。就職してサラリーマンになっても、職場で飲むインスタントコーヒーも営業先で出されるコーヒーも、全然おいしくなかったですね。

ーうーん、なんとなく分かります。どこでコーヒーに目覚めたんですか?

川下:名古屋に住んでいた26歳の時、たまたま出かけたナイトマーケットで歩いていたら、すごく味のあるおじさんがドリップコーヒーを売ってたんですよ。なんとなくその人に惹かれて、一杯500円だったかな、普段なら高いって思うはずなんですけどなぜか買ってしまって。それが、めっちゃおいしかったんです。そこからおじさんと色々話すようになって「コーヒーっておもしろいかも」と思ったんですよね。そこからハマって、自分でも淹れてみたくて道具を買ったのがスタートです。

ー衝撃の出会い。

川下:不思議な魅力のあるおじさんでした。屋号は「コバレレコーヒー」さんていって。小林さんというおじさんが、ウクレレを弾きながらコーヒー屋をしてるんですよ笑 しかもコーヒーを淹れながらビールを飲んでる。トヨタの古いピックアップトラックを改造して屋台仕様にしてて、それもかっこよかったですね。ヒッピーみたいな感じ。

ー会ってみたいです。小林さんにコーヒーの基本を教えてもらったんですね。

川下:次の出店場所にも訪ねて行って、コーヒーの淹れ方や必要な道具を小林さんに教えてもらって自分で淹れてみるようになりました。そうして意識し始めると、今までスルーしていたコーヒーの情報が入ってくるようになるじゃないですか。近所のお店でもコーヒーの淹れ方教室をやってるんだな、とか。そうやっていろんな所で教えてもらいました。

ーコーヒーを好きになったきっかけを、はっきり覚えているんですね。

川下:うん。初めて飲んだ小林さんのコーヒーが、ペルーの豆やったんですよ。ヤマとカワでペルーを販売しているのは、最初に飲んだ時の感動した味を再現しようと思っているからです。

ーもし世界からコーヒーがなくなったら、悲しいですか?

川下:もちろんコーヒーはめっちゃ好きですけど、コーヒーに人生を賭けるみたいな気持ちは全然ないんです。万が一コーヒーが輸入されなくなるようなことがあったら、「じゃあドーナツ屋さんやるか!」って考えると思う。

ードーナツ! 新しく何か始めることに、不安はないですか?

川下:やったことがないことへのチャレンジは今もしているんですよ。例えば最近は、今まで出していなかったウェブ広告を始めました。初めてのことは怖いけど、いつでも新しいことを始めていかなきゃいけないと思うんです。何も始めないときっと衰退するしかないと思うし、それに僕、飽きやすいので笑 「新しいことをしたい」と思う時期が定期的にやってくる。ただし失敗しても大丈夫なように、小さいところから始めることは意識しています。

道具は「好きなデザイン」が一番

ードリップに使っている道具を見せてください!

川下:木のドリッパーは最近気に入っているもので、杉田創作さんという若い木工作家さんの作品です。最近うちのお店で取り扱い始めました。かっこよくないですか?

ーかっこいい……。道具はどうやって選んでいますか?

川下:仕事柄たくさんの道具を試しますが、個人的に選ぶ基準はデザイン一択。お客さんにもデザイン重視をお薦めしています。コーヒー器具はどのメーカーもある程度のレベルまで到達しているから、どれを選んでも大きな違いはないんですよ。細かい違いはあるけど、その差はなかなか分からない。だったらデザインが好きとか長く使いたいとか、キッチンに置いておきたいと思うものを選ぶのがいいと思います。

ー確かに毎日飲むものだから、好きな道具で淹れると気分も上がりますね。

川下:コーヒーを淹れる時間を楽しむなら、やっぱり気に入ったデザインの道具を使うことが大事だと思います。コーヒーを淹れる時間が楽しいとかテンションが上がるとか、そんな感覚も全部、コーヒーの価値だと思うんですよね。

ー目で楽しむのもコーヒーの魅力ですよね。今日は素敵なお話をありがとうございました!

店主・川下がはじめて飲んで感動したペルーをお試しください!

インタビュー記事の中でも話していますが、まだ20代だった僕が最初に飲んだドリップコーヒーが『ペルーオーガニック』の豆でした。
その時飲んだコーヒーは、全然苦くなくて、本当に甘いコーヒー。まっすぐに感動したなぁ。
その感動をみなさんにもお届けしたくて、何百回と焙煎をくり返し、少しずつ確実に理想の味に近づいています!

甘みを全面にだすためには、苦味も酸味もつよく出すぎない一瞬のタイミングで煎り止める必要があります。
その絶妙な焙煎具合によって実現した、ミルクチョコレートのような甘みが広がるコーヒーをぜひお試しください!

1日10セット限定↓