
【まいにち飲めるコーヒーのつくりかた】ヤマとカワ珈琲店の焙煎方法を公開します
ヤマとカワ珈琲店が目指しているのは、『まいにち飲めるコーヒー』。
雑味がなく、甘みやコクが口の中にずっと残る、余韻が長いコーヒーです。
それを実現させるためには、まずは質の良い生豆を使うこと。
そして焙煎によって美味しい成分をしっかり化学変化させること。
この2点がとても重要になってきます。
では、どんな風に焙煎しているのか、ご紹介していきます。
1.生豆の選別
みなさんが目にするコーヒー豆の色って茶色ですよね?
焙煎した後のコーヒー豆は茶色ですが、焙煎する前のコーヒー豆(生豆)は白色をしています。

コーヒー豆には収穫途中や精製途中に、品質の良くない豆が混ざってしまうことがあります。
欠けたり割れていたりという形状的に問題があるものや、カビなどの衛生的に問題があるものなどが混ざってしまいます。
形状的な欠点は焙煎した後でも比較的見つけやすいのですが、カビのように黒くなっているものは、焙煎する前の白色の状態でないと発見できないのです。

ですので、ヤマとカワでは焙煎前にコーヒー豆の選別を行い、欠点豆を1つずつ取り除くことからスタートします。

2.生豆の保温

よほど大きなコーヒー屋でない限り、コーヒーの生豆は常温環境下で保存しています。
ヤマとカワでも店内に保存しているため、夏は暑く(クーラーはあります)、冬は寒い環境下で保存しています。
夏場は良いとしても、冬場は朝晩マイナス気温になることもある長野市。
そんな環境下で保存していると、生豆自体の温度も冷たくなってしまっています。
そのため、コーヒー生豆の温度を一年中同じ温度(だいたい28℃くらいがベスト)に保つために、焙煎機に投入する前に生豆を加温します。

保温の方法は、石油ストーブの上に置いたり、焙煎機の放熱を利用したり、季節や豆の冷え具合によって工夫しています。
3.焙煎機の予熱

焙煎機もコーヒー生豆と同様に、冬場は冷えてしまっています。
逆に夏場はどんどん熱を蓄熱していくので、それも注意が必要です。
ヤマとカワでは、赤外線温度計を利用して、焙煎機がどれくらい熱を蓄熱しているのかを常に管理しています。

火力というエネルギーと、蓄熱というエネルギーの両方を使ってコーヒー豆を焼いていくのがポイントです。
4.焙煎開始

焙煎機にコーヒー豆を投入してしまえば、焙煎のレシピに従って、決まったタイミングで火力や排気を調整します。
焙煎のレシピは、ヤマとカワを始めてからの毎日が詰まった焙煎ノートを参考にします。
豆の種類ごと、季節ごとに微調整しながらより良いレシピに今も更新し続けています。

焙煎時間は1回およそ16分~18分程度。
その短時間の間に理想の味に仕上げます。
ヤマとカワで大切にしているポイントは2つ。
まず1つは焙煎の前半部分、豆の投入から11分までの間。
この区間は、焙煎機の釜の蓄熱をしっかり高めて、火力は弱火にすること。
蓄熱エネルギーでじっくり焼くことで、豆の芯まで火が入り、成分の化学変化が活性化すると考えています。
コーヒー豆に含まれる「甘み」や「コク」は、このタイミングで生成されます。

そしてもう1つは、焙煎の後半部分に、排気をあけすぎないこと。
排気を開けすぎると、せっかく前半部分で作りだしたコーヒーの「甘み」や「コク」の成分が、水分と一緒に飛んでいってしまいます。

しかし、水分を残しすぎてしまうと、「渋み」を生み出す原因になってしまいます。
水分は抜きすぎてもダメだし、残しすぎてもダメ。
そのちょうどいい塩梅がとても難しいのです。
5.焙煎終了
コーヒー豆が白から褐色に変わり、さらに茶色に変わってきたら、その色と香りを確認して焙煎を終了させます。



終了させるポイントは、人の目と鼻を使ってタイミングを見計らうのです。
焙煎のこだわり
①定期的なメンテナンス


火から下ろすタイミングが数秒違うだけで味が変わってしまう焙煎の世界。
さらに、毎日変わる気温や湿度にも微妙に影響されます。
そんな可変要素が多い中で焙煎を安定させるためには、せめて焙煎機だけは毎日(できるだけ)同じ状態をキープすることが大事です。
ヤマとカワでは、毎日焙煎するたびに細かくエリアを分けて掃除をしているので、年末にまとめて大掃除なんてことは絶対にしません。
排気部分に汚れがなく、滞りなく煙が排出されるため、
クリアで余韻の長い珈琲を安定して焙煎することができます
②焙煎の様子をイメージしてトライ&エラーを繰り返す

コーヒーの焙煎は、豆をただ焼くだけではなく、
「甘み」や「コク」といった美味しい成分を化学変化によって生成させることが重要です。
ではどのタイミングで、どの成分が生成されているのでしょうか?
そして、その成分を最大限に生成させる条件とはどんな火力、排気なのでしょうか?
僕は科学者じゃないので、正解は分かりません。
ただ、分からないからこそ、毎日焙煎している中で、「こうかな?」という想像を膨らませることができるし、
正解を証明できないからこそ、「もっとこうすれば美味しくなるんじゃないか?」と日々進化し続けることができます。
焙煎の基本を押さえたうえで、常にイメージして、変化して、調整して、を繰り返すのです。