春の焙煎は難しいや

この時期の焙煎には毎年悩まされる。
日によって気温が全然違うし、1日の中でも寒暖差が激しい。

僕は朝の6時半には店に来て焙煎機の暖気運転を開始する。なのでその日1バッチ目はだいたい7時半とか8時くらいに投入する。
その1バッチ目の時の気温と、3バッチ目(10時くらいかな?)の時の気温では、この季節はかなりの差があることになってしまう。
バッチごとに計測している温度は、気温、生豆の温度、釜内部の温度、釜のフロントパネルの温度を3箇所、これらのデータを駆使して、去年の今頃と比較しながら火力と排気のバランスをバッチごとに考える。なかなか至難の技だ。

基本的に、釜内部の温度(豆温度とも言う)が160℃に達するまでは美味しい成分を化学変化させる工程と位置づけ、排気も絞り気味で火力も中火でじっくり熱を伝えるというのが僕の考えだ。そしてその160℃までの火力と排気とのバランスで味の95%くらいが決まってしまうとも考えている。前半戦がとても重要だ。
この時期は冬の厳しい寒さが緩むことで排気が少し弱くなる(空気を引っ張る力が弱くなる)。それに気づかずに冬と同じ排気・火力バランスで焙煎していると、美味しい成分がどうにも『前に出てきてない』ような味になってしまう。焙煎後の試飲でこの『前に出てきてない』を感じたら、排気を(冬に比べて)開き気味にする。そしてそれに合わせて火力も上げる。
排気を開けると空気を引っ張る力が強くなるため焙煎機内の圧力が下がる。焙煎機内の圧力は夏でも冬でも1年中一定にしたいので、排気を開けたらその分火力を上げて熱風を多く与えることで焙煎機内の圧力を一定にしなければならない。逆に排気を閉めた時は火力も下げる。排気と火力は常にセットで考える。
焙煎機内の圧力を保つことで、熱エネルギーがしっかりと豆まで浸透し、コクと甘味のある味わいになる。

ただし、うっかり排気を開けすぎてしまうと今度は美味しい成分が『抜けてしまった』味になってしまう。
焙煎後の試飲の時に違和感を感じたら、それが『前に出てきてない』味なのか、『抜けてしまった』味なのかを見極め、それによって調節した火力と排気のデータを残すことが、来年の自分のためになるに違いない。