忘れらない珈琲

珈琲屋あるあるなのかもしれないけれど、
僕は昔、珈琲が飲めませんでした。

正確に言うと、今みたいにキチンと焙煎し、ドリップなどで抽出した珈琲を飲んだ経験がなかったのです。

両親も喫茶店に行くようなタイプではなかったし、実家ではいつもインスタントのコーヒーを少し濃い目に作ってそれに牛乳をたっぷり入れて飲むのが僕の中での『コーヒー』でした。
会社員になっても、打合せに行った先で出されるコーヒーはインスタントか何か分からないけれど、飲んですぐに胃がキュっとしてしまうような味で、本当に苦手だった。それこそスタバやお洒落なカフェにも行ったりしてたが、小さい頃の経験から「コーヒーには牛乳を入れる飲み物」としてカフェオレやカフェラテばかりを頼んでいた気がする。ブラックのコーヒーなんて、一応メニューにはあるけど誰も飲まないもんだとすら思っていた。

そんな僕が、なぜ珈琲を飲むようになったのか?
今日はそんな話をしてみたいと思う。

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2010年、その時僕は名古屋に住んでいた。
夏が終わった初秋のある日、たまに顔を出していたカメラ屋さんが『なやばし夜イチ』という名古屋市のど真ん中で開催しているナイトマーケットに参加するというので、遊びに行った。
そこではカメラ屋さん以外にも古道具やアクセサリーなどの物販や、飲食ブースなど数多く出店していて、お洒落な、キラキラしている都会的なナイトマーケットだったような記憶がある。

カメラ屋の店主と少し話しをして、飲食ブースで適当にお腹も満たし、そろそろ帰ろうかなと会場の出口に差し掛かったところ、緑の古いトヨタのトラックで出店している『コバレレコーヒー』が目に入った。珈琲が1杯400円くらいだったかな、その当時もまだまだカフェオレ派だったし、ブラックコーヒー1杯に400円も払うなんてそれまではあり得なかったのに、なぜだかその日はその珈琲を飲んでみたいと思ってしまった。トラックが古くてカッコよかったからなのか、店主がとても面白そうな人に見えたからなのか(珈琲淹れながらビールを飲んでたし)、気がつけば1杯注文していた。

コバレレコーヒーはウクレレ奏者のコバさんこと小林さんが営んでいる珈琲屋(今は愛知県の知多半島に拠点を構え、定期的に名古屋近郊のイベントに出店もしている)。コバさんの絶妙なゆるいテンポの話し方は、当時会社員として効率重視でチャキチャキと暮らしていた自分の中にすぐ染み込み、魅了された。
何種類かの銘柄が並ぶ中で、その時飲んだ珈琲は「ペルーオーガニック」だった。全然苦くなくって、本当に甘い珈琲。いつまでも口の中に心地いいコクが残って、シンプルに感動したのを覚えている。今まで知らなかった珈琲という世界に心が躍り、その場で1時間以上コバさんと話してた。

その日をきっかけに僕は珈琲にハマりはじめた。幸いにも名古屋は喫茶店文化がある。自家焙煎している老舗の喫茶店にもたくさん通ったし、コバさんの焙煎機を作ったフレーバーコーヒーにも通った(フレーバーコーヒーについてもまた改めて書きたい)。
珈琲専門店から焙煎豆を購入し、自宅で毎朝ドリップするようになった。さらに自分で手網で焙煎するようにもなった。そしてその頃くらいに会社員を辞めて個人事業主になる決意をした。
仕事として珈琲屋になることに決めた。⇒ヤマとカワ珈琲店の今に至るまで

 

あの日に飲んだペルーオーガニックの味が、僕が目指している珈琲の味の基盤となっているのは間違いない。甘味とコクが口の中にずっと残っている余韻の長い珈琲。
思い出というのは美化されるからいい。そこにはきっといつまでたっても追いつけないから、これからも焼き続けるモチベーションになる。

僕の思い出の珈琲豆、よかったら1度お試しください。
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